encho-jiga

寒くなってきた。今日はあたま痛いな。 
初めて母親を自転車の後ろに乗っけて駅まで走った。 
そこに意味はないけれど とても象徴的な出来事だ。僕にとっては。 





さて。 




「えんちょうじが」というソロアルバムを作ったのはいつだったかな。 
かなり前な気がする。うん、ずっと前だ。時間ばかり経ってしまった。 



いろんな紆余曲折を経てやっとカタチにできたのが去年だったんだから。 
でも既に2007年には全曲揃っていたように思う。 
いい加減 カタチにしてあげようと思ったきっかけは・・なんだったのか 
もう忘れちゃったな。「儀式」について考えはじめてからだと思う。 
いや間違えた、「儀礼」だ。通過儀礼の儀礼。 




それで一つの通過儀礼としてアルバムにするにあたってまず何をしたか? 




絵を描いたんだった。 
それも当時はMacユーザーではなくWindows PCを使っていたし、 
しかも今までの人生でロクに絵なんか描いた事がなかった。 
思い返せば小学校2年生の時に図工の授業でザリガニの絵を描くことになり 
描いてる途中で先生がみんなを呼び集めて「みんな、これを見ろ!これが 
ザリガニだってよ!」と僕の絵を指差し、そんなことを言う先生も先生だけど 
言われて集まった小学生もやはり小学生らしく軽蔑的大笑いをしてくれて 
それ以来「絵は向いてないな」と思っていた。 



それが35歳くらいになって突然「自分のアルバムくらい自分で絵でも 
描いてみるか」と思うに至ったのはやはり様々な絵(他人の描いたもの)に 
出会ってきた結果によるのだと思う。どれくらい絵に救われてきたか自分でも 
わからないくらい他人の描いた絵たちに心を動かされ、温められ、時に 
励まされもした。音楽と同じくらい作者の意図とは関係なく鑑賞する者の 
心を打つ瞬間があるのは自分にとって本当に「救済」だった。 




いや、感傷的な話っぽく見えるかもしれないけどそれはここまでの話。 

実際に絵を描いてみると、それは本当に軽蔑的大爆笑をされても仕方の無い 
レベルのものしか描けないことがよくわかった。技術がないのだ。 
それに、絵心? そんな言葉はついぞ見かけたことも聞いた事もない。 



とにかく小学生、いや小学校に上がる以前の子供達の人格形成期の初めの 
頃みたいな(と書くと語弊があるかもしれないけど)うまくカタチにならない 
ものしか描けないのだ。自分の才能に見切りをつけた僕はおもむろにPCを 
開き、その中のアクセサリか何かに最初から入ってるペイント機能を見つけた。 
それまでそんな機能があることすら知らなかった。 



でもとにかく見つけて画面全体を黒く塗りつぶした。それを消しゴムツールで 
消していったら何かのカタチに見えないでもないような気がした。 
それでその調子で6枚ほど描いてみたわけだ。絵に何を描くのかは最初から 
決まっていた。カエルだ。それも下島ガエルだ。それは形而上的なカエルなので 
実際には存在しないのかもしれないけれど、僕の中では既に一つの人格(?)の 
ようなものを持っていて、彼なりの視点を持った独立した生き物だった。 
でもカエルについて語り始めるとここには書ききれないほどの説明を必要と 
するので割愛させてもらう(割礼じゃないよ)。 





とにかくそれで絵を描いた。最初は黒く塗りつぶしたので次のは赤く、 
そのまた次のは緑色に。6枚描いてそれぞれに名前をつけた。 
名前を付けるという行為はなによりも象徴的だと思う。 



便宜的にとはいえこんな名前だ。月 想 詩 死 回帰 川。 



それらをいろいろと並べてはまた変えたりしてみて最終的に一つに 
してみた。それでジャケットは完成だ。最初は文字を入れずに手売りしていた 
のだけど、更に100枚増量するにあたって文字を入れることにした。 



もともと文字はある人にお願いをしていた。去年の冬のことだ。 
絵の加工もその人にお願いして1st editionは出来上がっていた。 
その人の「書」をちゃんと見た事はなかったのだが僕自身と深い縁のある人 
だったし、きちんと「書」についての心構えも技術も持っている人だった。 
でもそれは訳あって叶わなかった。 

今年になって自分で書こうとしたのだが、下手クソな絵以上に「書」は 
向いてないことが発覚。うすうすわかってはいたけれど。「書」は半ば諦めた。 


出来上がった絵のさらなる加工と印刷を一緒に活動してるアメリカ人の泥流に 
お願いした。彼も超多忙な生活をしてるのだが快く引き受けてくれ、少ない 
空き時間を僕の為に費やしてくれた。文字はやはり一緒に活動をしている弾き語り 
の千春に書いてもらった。こうして溜まった音源をどうにかカタチにすることが 
できたわけだ。 



音源そのものは4曲を除いてその他9曲全てを自分で弾き自分で録りミックスした。 
残り4曲はBang on recordの喜多野さんに録音、ミックスしていただいた。 
いや正確にはその4曲のうち2曲の歌モノ(どちらも歌詞はないけど)は2004年頃に 
録音してもらったものだ。声はeco(現在は「えこ」)とヒロコウイリアムスに 
歌ってもらった。その2曲はbassに田原キヨ、drumにレコーディング当日になって 
ベースのキヨさんが連れて来た鈴木タケオ(どんな字?)さん。その日以来その 
タケオさんとは会っていないのだが。。 

残り2曲はブラジルから戻って来て(荷物を向こうに残したまま...)、どうしようか 
身の振り方に迷ってある日、上記のえこにピアノを弾いてもらうことに決めた。 
当時のえこの部屋のピアノの横でマイクを立ててえこ自身が録音してくれた。 
いや、正確にはそのうちの1曲がそれで、もう1曲は結婚後のえこの新居に 
上記の喜多野さんと押し掛けて冬の季節に寒い寒い玄関先の廊下にマイクを 
立てて録ってもらった。ピアノと部屋を分けるためだ。 





・・・とかなり前置きが長くなったけれど、そういった経緯があり 
せっかくカタチになったので今まで手売りしかしていなかったのだけど 
ダウンロード販売もできるようにしてみたわけです。 


http://www.cdbaby.com/cd/keitakasugi 
*このサイトでは曲名の左横の三角のpreviewマークをクリックすると試聴できます。 

iTunesやらAmazon等、その他複数のサイトに反映されるまでには 
あと数週間かかるかもしれない。 



2枚目、3枚目とカタチにできるくらい曲ばかり溜まってしまったので 
区切りをつけるためにもひとまずここで1stについて書いておこうと思った 
のです。特にレコ発ライブとかやらないから。 



最後にこの「えんちょうじが」に関わってくれた全ての方々に 
感謝の気持ちをこめて。聴いてくれた方にももちろん。 





では今夜はおやすみなさい。